借用(しゃくよう)とは?トラブルを防ぐための基礎知識と借用書の重要性
「借用(しゃくよう)」とは、お金や物を他人から借りることを指します。日常生活からビジネスシーン、法律的な手続きまで幅広く使われる言葉ですが、特に金銭が絡む場合は、単なる「貸し借り」以上の法的な責任が伴います。
後々のトラブルを回避し、円滑な人間関係や取引を維持するためには、借用のルールと正しい書類の作成方法を理解しておくことが不可欠です。この記事では、借用に関する基礎知識から、法的効力を持つ借用書の書き方までを詳しく解説します。
1. 「借用」の定義と重要性
借用とは、対価を支払って借りる「賃貸借(ちんたいしゃく)」や、無償で借りる「使用貸借(しようたいしゃく)」、そしてお金を借りる「金銭消費貸借(きんせんしょうひたいしゃく)」などの総称です。
特に個人間や企業間のお金の貸し借りで最も恐ろしいのは、「言った・言わない」のトラブルです。
「返済期限を決めていなかった」
「利息をつけると言ったはずだ」
「そもそも、あれは貰ったものだと思っていた」
こうした認識の齟齬は、信頼関係を根底から壊すだけでなく、裁判沙汰に発展するリスクも孕んでいます。
2. トラブルを防ぐ「借用書(金銭消費貸借契約書)」の役割
借用書は、貸し借りの事実を公的に証明する唯一の手段です。作成しておくことで、主に以下の3つのメリットがあります。
① 証拠としての効力
万が一、相手が返済を拒んだ場合、借用書があれば裁判で貸し付けの事実を証明できます。また、公証役場で「公正証書」として作成すれば、裁判を通さずに強制執行(差し押さえ)を行うことも可能になります。
② 贈与税対策になる
親族間で高額なお金を無利子・無期限で借りると、税務署から「実質的なプレゼント(贈与)」とみなされ、贈与税が課せられることがあります。借用書を作成し、返済の記録を残しておくことは、正当な借用であることを証明するために重要です。
③ 心理的な抑止力
書面にサインをし、印鑑を押すという行為は、借主に対して「必ず返さなければならない」という強い責任感を抱かせます。
3. 【実践】法的効力を持つ借用書の書き方
借用書は手書きでもパソコン作成でも有効ですが、以下の項目が漏れていると証拠能力が弱まってしまいます。
借用書に必ず記載すべき7項目
作成日: 書類を作成した年月日。
貸主と借主の氏名: 双方の氏名。住所の記載と、実印での捺印があるとなお良いです。
借用金額: 「¥100,000-」や「金壱拾萬圓整」など、後から数字を書き換えられない形式で記します。
受領の事実: 「本日、上記の金額を正に受領いたしました」という一文。
返済期限と方法: いつまでに、どのような方法(振込など)で返すか。
利息と遅延損害金: 無利子の場合はその旨を。設定する場合は「利息制限法」の範囲内で記載します。
収入印紙: 借用金額が1万円を超える場合、金額に応じた収入印紙を貼り、消印を押す必要があります(契約書の場合)。
4. 物の借用(物品借用)における注意点
お金だけでなく、機材や車両、備品などの「物」を借りる際も注意が必要です。
現状確認の徹底: 借りる前に、キズや不具合がないか双方で確認し、必要であれば写真を撮っておきます。
用途の制限: 「目的以外に使用しない」「第三者に貸し出さない」といったルールを明確にします。
返却時のルール: 汚損した場合の賠償責任や、消耗品の負担についても決めておくとスムーズです。
5. 借用に関連する用語の違い
拝借(はいしゃく): 借りるの謙譲語。目上の人に対して使います(例:お知恵を拝借する)。
貸借(たいしゃく): 貸すことと借りることの両方を指します。
ローン・クレジット: 金融機関などから計画的に借用し、分割で返済する仕組みです。
まとめ:正しい「借用」が信頼を守る
借用は、相手との信頼があって初めて成立する行為です。だからこそ、その信頼を形にする「借用書」を省略してはいけません。
「親しい仲だからこそ、きちんとしておこう」という姿勢が、結果としてあなた自身と大切な相手を守ることに繋がります。お金や物をやり取りする際は、この記事で紹介した項目を参考に、必ず書面を残す習慣をつけましょう。