「え、私の山はどうなるの?」新しい森林管理制度、分かりやすく解説します!


日本の国土の大部分を占める森。その多くは、古くから個人の皆さんによって大切に守り育てられてきました。でも、時代とともに、山の持ち主(森林所有者)さんの高齢化が進んだり、遠くに住んでいて手入れが難しくなったりして、「自分の山がどうなっているか分からない…」「手入れをしたくてもできない…」といった状況が増えています。

管理が行き届かなくなって荒れてしまった森は、土砂災害のリスクが高まったり、本来の環境を守る力が弱まってしまったりと、様々な問題を引き起こす可能性があります。

そんな課題を解決するため、そして日本の森を未来へ引き継いでいくために、新しい制度が始まりました。それが「森林経営管理制度(森林経営管理法)」です!

ちょっと聞き慣れない名前かもしれませんが、これは私たちの森、そして林業の未来にとって、とっても大切な取り組みなんです。今回は、この新しい制度について、林野庁さんの情報も参考にしながら、できるだけ分かりやすくお話ししたいと思います。「私の山って関係あるの?」「市町村は何をするの?」といった疑問にもお答えしていきますね。

なぜ今、新しい森林管理の仕組みが必要なの?

新しい制度ができた背景には、大きく二つの理由があります。

  1. 「所有者不明」の森林が増えている: 相続などで山の持ち主が変わったのに登記が更新されず、「この山の今の持ち主は誰だろう?」と分からなくなってしまうケースが増えています。所有者が分からないと、当然ながら適切な管理をお願いすることもできません。
  2. 手入れをしたくても、できない状況がある: 山の持ち主さんが高齢になったり、山から離れた場所に住んでいたりすると、体力的に、あるいは時間的になかなか手入れが難しくなります。また、小規模な森林をバラバラに持っている場合、まとめて作業するのが難しく、林業事業体にとっても効率が悪くなってしまうという問題もあります。

このように、適切な管理がされない「手入れ不足の森」が増えると、せっかく植えられた木も十分に育たず、木材として活用できないだけでなく、森が本来持っている「水を蓄える力」や「土砂災害を防ぐ力」も弱まってしまいます。

森林経営管理制度って、どんな仕組み? 分かりやすい3つのステップ

この制度は、こうした問題を解決するために、市町村が中心となって森林の管理をサポートする仕組みです。大まかな流れを見てみましょう。

ステップ①:森林所有者の意思確認(市町村から「どうしますか?」と聞かれます)

まず、お住まいの市町村が、あなたの持っている山について、今後の管理の意向を確認します。「自分で管理しますか?」「それとも、市町村に管理を任せますか?」というように、所有者の皆さんの考えを聞いてくれます。

ステップ②:市町村への集積・集約化(市町村が一時的に「お預かり」)

もし森林所有者さんが「自分で管理するのは難しいので、市町村にお任せしたい」という意向を示した場合、その山の管理権が市町村に移ります。バラバラになっていた小規模な森林も、市町村が一つのまとまりとして管理することで、効率的な作業計画が立てやすくなります。これを「集積・集約化」と呼びます。

ステップ③:意欲と能力のある林業経営者へ再委託(プロの林業家が手入れ!)

市町村が集積した森林のうち、木材を収穫できるような、収益が見込める森林については、専門的な知識や技術、そして意欲を持った林業事業体(林業経営者)に管理や施業(伐採や植林など)を委託します。これにより、これまで手入れされずにいた山にプロの技術が入り、健全な森づくりが進みます。収益の一部は所有者さんにも還元される場合があります。

収益が見込めない山でも、市町村が公的に管理することで、最低限の整備が行われたり、災害防止などの目的で管理が続けられたりします。

関係者それぞれの役割と、ちょっと気になるアレコレ

この制度には、森林所有者さん、市町村、そして林業事業体の三者が深く関わってきます。

  • 森林所有者さん:
    • メリット: 自分では管理が難しかった山の整備をプロに任せられる可能性があります。所有者不明の状態が解消されたり、境界が明確になったりすることもあります。収益が発生すれば還元されることも。
    • ちょっと気になる点: 制度を利用するための手続きがあったり、場合によっては費用負担が発生したりする可能性もあります。市町村からの意向確認にはきちんと答える必要があります。
  • 市町村:
    • 役割: 地域の森林全体の状況を把握し、所有者の意向確認、森林の集積・集約化、林業事業体への再委託など、制度の中心的役割を担います。地域の森林計画に沿った、きめ細やかな管理が期待されます。
    • ちょっと気になる点: 多くの森林所有者さんとのやり取りや、林業事業体との連携など、担当部署のマンパワーや専門知識が必要になる場合があります。
  • 林業事業体(林業経営者):
    • メリット: 市町村が集約した森林の管理を受託することで、これまで小規模で非効率だった作業箇所がまとまり、効率的に施業を行えるようになります。安定的な作業量の確保につながる可能性も。
    • 役割: 市町村から委託された森林について、専門家として適切な森林経営を行います。施業の実施はもちろん、市町村や森林所有者さんへの丁寧な説明も求められます。

この制度で、日本の林業はどう変わる?

森林経営管理制度が進むことで、日本の林業にはいくつかの良い変化が期待できます。

  • 手入れ不足の山が減り、健全な森が増える: 管理が行き届いていなかった森林に手入れが入ることで、CO2吸収能力が高まったり、水源涵養機能が向上したりと、森の持つ力が回復します。
  • 災害に強い森が増える: 適切な間伐などが行われることで、根っこがしっかりと張り、土砂崩れなどを防ぐ力が強まります。
  • 国産材の安定供給につながる: これまで使われずにいた木が、計画的に伐採・利用されるようになり、国産材の安定的な供給につながる可能性があります。これは、木材の価格安定や、地域経済の活性化にも寄与します。
  • 林業事業体の経営が安定する: 効率的な作業が可能になったり、安定した仕事量が確保されたりすることで、林業事業体がより経営しやすくなり、働く人の環境改善にもつながります。

まとめ:森と人をつなぐ、新しい「橋渡し」

森林経営管理制度は、森林所有者さん一人ひとりの力だけでは難しくなってきた、日本の森林の適切な管理を持続していくための、新しい「橋渡し」の仕組みと言えます。

この制度が円滑に進むことで、荒廃が進む森林に光が当たり、豊かな森の恵みを再び活かせるようになります。それは、災害に強く、環境を守る力が高い、そしてたくさんの木材を供給できる、未来世代に誇れる森へとつながっていきます。

もし、あなたが森林所有者さんであったり、身近に山を持っている方がいたりしたら、ぜひこの制度のことを思い出してみてください。市町村からの意向確認には、ぜひ前向きに協力をお願いします。

制度への理解と、関係者みんなの協力が、日本の森と林業の明るい未来をつくる力になります。

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